解説

給与の事務の流れ(給料の計算を外注しても会社がする作業)

執筆 公認会計士・税理士 中村勇樹|2026/11/02 時点の法令で確認

要点

  • 給料の計算を外注しても、会社には払う・納める・渡すの作業が残ります。
  • 毎月の支払いと納付のほかに、5月・7月・11月〜1月に年1回の作業があります。
  • 役所から届いた紙は、その日のうちに外注先へ渡します。

給与作業の最低限

このページでは、給料の計算を社労士などに外注している会社でも、最低限必要な作業の観点で、給与にかかわる8つの作業を解説します。

  • 締め日

    勤務時間・残業・手当をまとめて渡す

    → 外注先

  • 給料日

    給料を振り込み、給与明細を渡す

    → 従業員

  • 翌月10日まで

    給料から天引きした税金を納める

    → 税務署・市区町村

  • 入社・退社が決まったら

    すぐに知らせる

    → 外注先

  • 役所から紙が届いたら

    その日のうちに渡す

    → 外注先

  • 7月10日まで

    労働保険料を納める

    → 労働局(銀行で納める)

  • 11月

    年末調整の申告書を従業員に配って集め、渡す

    → 従業員・外注先

  • 1月31日まで

    源泉徴収票を渡す

    → 従業員

つまり、会社には最低限、払う・納める・渡すの作業が残ります。

○ 会社に残る3種類の作業

  • 払う: 給料を従業員に振り込む
  • 納める: 天引きした税金と保険料を納める
  • 渡す: 材料・届いた紙・申告書を外注先へ渡す

社内で給料を計算している会社は、これに加えて、給料の計算と役所への届出も担当者がします。どの作業が増えるかは、ページの最後の流れ図で「社内でしている」を押すと出ます。

給与イベント

一年間のイベント

一年間の給与に関わるイベントは、以下のとおりです。

  1. 1月

    • 10日源泉税を納める(年末調整の差額込み)
    • 20日源泉税7〜12月分を納める
    • 31日源泉徴収票を従業員へ渡す
    • 31日労働保険料の3回目を納める
  2. 2月

    毎月の作業だけ

  3. 3月

    毎月の作業だけ

  4. 4月

    毎月の作業だけ

  5. 5月

    • 住民税の額のお知らせが届く → 外注先へ
  6. 6月

    • 住民税の額が変わる(6月の給料から)
    • 労働保険・算定基礎届の用紙が届く → 外注先へ
    • 10日住民税12〜5月分を納める
  7. 7月

    • 10日労働保険料を納める
    • 10日源泉税1〜6月分を納める
    • 社会保険料の額のお知らせが届く → 外注先へ
  8. 8月

    毎月の作業だけ

  9. 9月

    • 9月分から社会保険料の額が変わる
  10. 10月

    • 31日労働保険料の2回目を納める
  11. 11月

    • 年末調整の申告書を配って集める → 外注先へ
  12. 12月

    • 最後の給料で、年末調整の差額を返す・集める
    • 10日住民税6〜11月分を納める
灰色の字は、一部の会社だけの作業です(納期の特例を受けている会社・労働保険料を分けて納める会社)

毎月のイベント

毎月くり返すのは、材料を渡す・給料を振り込む・税金を納めるの3つです。社会保険料は口座から引き落とされるので、会社が手を動かすことはありません。

  1. 締め日

    勤務時間・手当を渡す

    → 外注先

  2. 給料日

    給料を振り込み、明細を渡す

    → 従業員

  3. 翌月10日まで

    源泉税・住民税を納める

    → 税務署・市区町村

  4. 翌月末日

    社会保険料が引き落とされる

    → 年金事務所

点線の札は、口座から自動で引き落とされるもの(会社の作業はありません)

締め日が来たら、給料の計算に要る材料を外注先へ渡します。

○ 外注先へ渡す材料

  • 各人の勤務時間と、残業・手当
  • 基本給・時給を変えた人の額
  • 入社・退社した人の情報

外注先から届いた給与明細の額を、従業員に振り込みます。振り込む額は、額面から税金と社会保険料を差し引いた額です。それぞれの額の決まり方は、給与事務の基礎知識にあります。

給料から天引きした源泉税(国の所得税)は税務署へ、住民税は従業員が住む市区町村へ、給料を払った月の翌月10日までに納めます。住民税は、市区町村ごとに分けて納めます。社会保険料は翌月末日に口座から引き落とされるので、納める作業はありません。

ツール源泉税納付書 作成ツール源泉税の納付書のどの欄に何を書くかが、指示に沿って転記するだけで分かります。

場面は、入社退社・紙が届いたとき・年末調整の3つ

入社・退社が決まったら

人が入ったり辞めたりすると、社会保険と雇用保険に入る・抜ける届を出します。社会保険の届は5日以内と短いので、決まったらすぐに外注先へ知らせます。

外注先(社内なら担当者)
年金事務所
  • 社会保険に入る・抜ける届(5日以内)
ハローワーク
  • 入社: 雇用保険に入る届(翌月10日まで)
  • 退社: 雇用保険を抜ける届(10日以内)
従業員が住む市区町村
  • 退社: 住民税を天引きしていた人の届(翌月10日まで)

入社した人には、扶養控除等申告書(家族の人数などを書く紙)を書いてもらい、会社で保管します。年の途中の入社で前の勤め先があれば、前の会社の源泉徴収票も受け取ります。

役所から紙が届いたら

届いたその日に、外注先へ渡す

役所からの通知は、外注先ではなく会社に届きます。外注先はこの紙を見ないと、天引きする額を変えたり届を出したりできません。次の4枚は、届いたらその日のうちに外注先へ渡します。

  • 住民税の額のお知らせ

    5月

    従業員ごとに、6月から1年間天引きする住民税の額が書いてあります

    差出人: 従業員が住む市区町村

    外注先へ渡す。6月の給料から、天引きする住民税の額が変わります

  • 4〜6月の給料を知らせる用紙

    6月

    算定基礎届。9月からの社会保険料が、これで決まります

    差出人: 日本年金機構(年金事務所)

    外注先へ渡す。外注先が書いて、7月10日までに出します

  • 労働保険の申告の用紙

    6月

    1年分の給料の合計を知らせて、労災保険と雇用保険の保険料を精算します

    差出人: 労働局

    外注先へ渡す。計算された保険料は、7月10日までに会社が納めます

  • 社会保険料の額のお知らせ

    7月中旬〜

    算定基礎届をもとに決まった、9月からの保険料のもとになる額です

    差出人: 日本年金機構(年金事務所)

    外注先へ渡す。9月分の保険料から、天引きする額が変わります

紙の見た目はイメージです。様式は市区町村・年度によって違います

年末調整

11月に従業員へ申告書を配り、保険料の控除証明書と一緒に集めて外注先へ渡します。外注先が12月の給料で1年分の源泉税を計算し直したら、会社は次の3つをします。

○ 年末調整で会社がすること

  • 差額を従業員に返す・集める(最後の給料で)
  • 源泉税を納める(1月10日まで)
  • 源泉徴収票を従業員に渡す(1月31日まで)

流れは年末調整とは?にあります。

社員3人の会社の1年で見ると

給料の計算を社労士に外注している、社員3人の会社の1年です。毎月の振り込みと納付のほかに、会社は次のことをしました。

  1. 4月

    1人を雇った

    採用が決まった日に社労士へ知らせ、本人に扶養控除等申告書を書いてもらった。社会保険と雇用保険の届は社労士が出した

  2. 5月

    市役所から封筒が届いた

    中身は住民税の額のお知らせ。その日に社労士へ渡し、6月の給料から天引きの額が変わった

  3. 6月〜7月

    労働保険と社会保険の用紙が届いた

    2つとも社労士へ渡した。社労士が書いて出し、会社は労働保険料を7月10日までに納めた

  4. 8月

    年金事務所から通知が届いた

    中身は社会保険料の額のお知らせ。社労士へ渡し、9月分から天引きの額が変わった

  5. 11月

    年末調整の申告書を集めた

    3人に申告書を配り、保険料の控除証明書と一緒に集めて社労士へ渡した

  6. 1月

    源泉徴収票を渡した

    12月の給料で差額を精算し、1月10日までに源泉税を納め、源泉徴収票を3人に渡した

詳しく見たい人は、流れ図と届の名前

書類とお金の流れ図

作業する人と書類の出し先を横に、時期を縦に並べ、書類やお金が渡る向きを矢印で示した図です。はじめは会社がする作業だけを出しています。「社内でしている」を押すと、外注先がする作業も出ます。

給料の計算は

会社がする作業だけを出しています。外注先がする作業は「社内でしている」を押すと出ます。

届の名前と中身

年に1回の届は、名前が難しく見えます。中身はどれも、払った給料の額を役所へ知らせて、保険料や税金を決め直すものです。

名前と中身

  • 算定基礎届(7月): 4〜6月の給料を年金事務所へ知らせる。9月からの社会保険料が決まる
  • 労働保険の年度更新(6〜7月): 1年分の給料の合計を労働局へ知らせ、保険料を精算する
  • 年末調整(11月〜1月): 1年分の源泉税を計算し直し、引きすぎた分を返す
  • 法定調書・給与支払報告書(1月): 誰にいくら払ったかを、税務署と市区町村へ知らせる

外注するか、内製するか

ここまでの作業は、給料の計算を外注しても会社に残るものです。読んでみて「これだけでも大変そう」と感じたなら、給料の計算まで社内でするのは負担が大きいと思います。その場合は無理をせず、社会保険労務士に頼んでください。計算や届出を任せられるうえに、会社がすることも一つずつ教えてもらえます。

社内でする

担当者を決めて、給与ソフトを使う

社長や経理の担当者が、ソフトで毎月の計算と年の手続をする

会社が届け出る

外に頼む

社会保険労務士に頼む

毎月の計算だけ、届出だけなど、頼む範囲を選べる

社労士が届け出る

社内でする場合も、紙と電卓ではなく市販の給与ソフトかWebのサービスを使います。給与ソフトは、できることで2つに分かれます。

  • 給与計算: 毎月の天引きを計算し、給与明細と給与台帳を作る
  • 人事労務: 入社・退社や年の手続の書類を作り、届出の流れを案内する

両方を1つでこなすサービスは多くなく、2つを使い分けている会社もあります。選ぶときは、自社がどちらを必要としているかを先に決めます。

根拠・参考

2026-11-02時点の法令・通達・国税庁の公表資料に基づいて書いています。個別の取引への当てはめは、 事実関係によって結論が変わることがあります。