給与事務の基礎知識
執筆 公認会計士・税理士 中村勇樹|2026/11/02 時点の法令で確認
要点
- 給料は、額面 = 手取りにはなりません。
- 源泉税・社会保険料・雇用保険料・住民税を計算して差し引く必要があります。
給料を払うときは計算が必要
額面と振り込む額は、同じになりません
給料を払うときは会社でも個人事業でも、相手が自分でも家族でも、以下の計算が必要です。
Aの額面から、B〜Eを差し引きます。
- B 源泉税国税庁の源泉徴収税額表で引く
- C 社会保険料年金事務所から届く通知の額で引く
- D 雇用保険料給与総額 × 雇用保険料率
- E 住民税市区町村から届く通知の額を引く
= 振り込む額(手取り)
月給25万円の人の例
月給25万円の場合、住む場所や家族構成にもよりますが、以下のような給与になります。
給与明細書
令和8年10月分
支給
- 基本給250,000
- A総支給額250,000
控除
- C健康保険料12,805
- C子ども・子育て支援金299
- C厚生年金保険料23,790
- D雇用保険料1,250
- B所得税4,770
- E住民税9,600
- 控除合計52,514
天引きした額は、あくまで預かったお金です。会社はこれを国や市区町村へ納めます。さらに下の表のように、追加で払うお金もあります。
| 会社が払う額 | 金額 |
|---|---|
| A給与総額(額面) | 250,000 |
| +C社会保険料の会社負担 | +36,894 |
| +C子ども・子育て拠出金(会社だけが負担) | +936 |
| +D雇用保険料の会社負担 | +2,125 |
| 会社が上乗せして払う額 | 39,955 |
| 会社が払う額の合計 | 289,955 |
つまり、月給25万円の人を1人雇う場合、従業員の手元には19万円が渡る一方、会社は総計29万円を払います。
改めて考えると、とても税金は高いですね。
働き方で、何を天引きするかが決まる
B~Eの天引きは全項目を全員からするわけではありません。
よくある属性ごとにまとめると、次のとおりです。
| 働く人 | 源泉税 | 社会保険料 | 雇用保険料 | 住民税 |
|---|---|---|---|---|
| 法人 | ||||
| 社長・役員 | 源泉税: 当てはまる | 社会保険料: 当てはまる | 雇用保険料: 当てはまらない | 住民税: 当てはまる |
| 正社員 | 源泉税: 当てはまる | 社会保険料: 当てはまる | 雇用保険料: 当てはまる | 住民税: 当てはまる |
| 週20時間以上のパート | 源泉税: 当てはまる | 社会保険料: 当てはまらない | 雇用保険料: 当てはまる | 住民税: 当てはまる |
| 週20時間未満のアルバイト | 源泉税: 当てはまる | 社会保険料: 当てはまらない | 雇用保険料: 当てはまらない | 住民税: 当てはまる |
| 個人事業(従業員5人未満) | ||||
| 正社員・週20時間以上のパート | 源泉税: 当てはまる | 社会保険料: 当てはまらない | 雇用保険料: 当てはまる | 住民税: 当てはまる |
| 週20時間未満のアルバイト | 源泉税: 当てはまる | 社会保険料: 当てはまらない | 雇用保険料: 当てはまらない | 住民税: 当てはまる |
パートは、労働時間・日数が正社員の4分の3未満の場合です。
源泉税と住民税は、給料が少ないと0円になる人もいます。
B~Eの解説
B〜Eそれぞれの解説をします。
B 源泉税
- 何の支払い?
- 給料から天引きして国へ納める所得税
- 誰からとる?
- 全員。扶養控除等申告書(扶養する家族を書いて会社に出す申告書)を出していない人からも引く
- 計算方法
- 会社が計算する。給料から社会保険料・雇用保険料を引いた額と扶養する家族の数で、国税庁の源泉徴収税額表を引く。令和8年分は、申告書を出している人なら月105,000円未満で0円
- どこへ払う?
- 税務署へ、翌月10日まで
くわしくは源泉税とは?にあります。
C 社会保険料
- 何の支払い?
- 健康保険と厚生年金。40歳以上の人は介護保険料も入り、令和8年4月分からは子ども・子育て支援金も一緒に引く
- 誰からとる?
- 社会保険に入っている人
- 計算方法
- 役所が知らせてくる。社会保険料を決めるための給料の目安の額(標準報酬月額)に料率を掛け、会社と従業員で半分ずつ負担する。目安の額は、25万円以上27万円未満の給料なら26万円、のように区切って決まる
- どこへ払う?
- 年金事務所へ。会社負担分と合わせた額が、翌月末日に口座から引き落とされる
入社のときと毎年7月に給料の額を年金事務所へ届け出ると、目安の額を知らせる通知が届きます。
年金事務所から
標準報酬月額の決定通知書
| 被保険者 | 適用する月 | 健康保険 | 厚生年金 |
|---|---|---|---|
| 氏名 | 令和8年9月 | 260千円 | 260千円 |
↑ この目安の額に料率を掛けて、毎月の社会保険料を出す
D 雇用保険料
- 何の支払い?
- 失業したときの手当などのための保険
- 誰からとる?
- 週20時間以上働き、31日以上雇う見込みのある人(パート・アルバイトも)。社長・役員は原則として入らない
- 計算方法
- 会社が計算する。毎月の給与総額 × 従業員負担分の料率。料率は国が年度ごとに決め、令和8年度の一般の事業は従業員0.5%・会社0.85%
- どこへ払う?
- 毎月は納めない。会社負担分と合わせた1年分を、7月10日までの労働保険料の精算(年度更新)で納める
E 住民税
- 何の支払い?
- 従業員が住む市区町村の税
- 誰からとる?
- 全員(前の年に所得があった人)。源泉税を天引きする会社は、住民税も天引きして納める義務がある(特別徴収)。会社や従業員が選べるものではない
- 計算方法
- 役所が知らせてくる。従業員が住む市区町村から、毎年5月末までに住民税の額の通知(特別徴収税額の決定通知書)が届き、6月から翌年5月までの12回に分けて引く
- どこへ払う?
- 従業員が住む市区町村へ、翌月10日まで
市区町村から
特別徴収税額の決定通知書
| 6月 | 7月 | 8月 | … | 翌年5月 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 氏名 | 10,200 | 9,600 | 9,600 | … | 9,600 |
↑ この月ごとの額を、その月の給料から天引きする(6月だけ端数を足した額)
B~Eの納め方
預かった額は、翌月にそれぞれの役所へ納めます
- 源泉税
- 翌月10日まで
- 社会保険料(会社負担分と合わせて)
- 翌月末日に口座から引き落とし
- 雇用保険料(会社負担分と合わせて)
- 1年分をまとめて7月10日まで
- 住民税
- 翌月10日まで
1年の作業の流れの解説
天引きの額が決まった後に会社がすること(1年の予定、入社・退社の届出、役所から届いた通知の扱い、社内でするか社労士に頼むか)は、次の解説にまとめています。
解説ページ給与の事務の流れ毎月・1年の予定と、入社・退社や通知が届いたときに会社がすることを、月ごとのカレンダーと流れ図で。解説を読む →