解説

役員報酬の決め方と節税の2つの原則(法人税を最小にする・報酬は均す)

執筆 公認会計士・税理士 中村勇樹|2026/10/11 時点の法令で確認

要点

  • 会社の利益は、社長の手元に届いて初めてゴールです。法人税と、所得税・社会保険料の合計で考えます。
  • 原則は2つ。法人税を最小にする(利益を年をまたがせない・先に出さない)ことと、役員報酬は均すことです。
  • 2つはぶつかるので、最適な報酬は数年の利益計画から決めます。詳しくは「最適な役員報酬を決める」を見てください。

利益は、社長の手元に届いてゴールです

会社の利益は、報酬として受け取り、手元に届いて初めてゴールです。そこまでは課税が完了していません、
その途中で、会社で法人税が、個人で所得税・住民税と社会保険料がかかります。片方だけを減らしても、もう片方が増えれば手残りは増えません。

売上経費を引いた利益法人税会社に残した利益にかかる会社役員報酬所得税・住民税社会保険料報酬にかかる社長の手元(ゴール)

税金を小さくするときの大事な原則は2つです。

原則①法人税を最小にする
原則②役員報酬は均す

原則① 法人税を最小にする

利益が年をまたぐと法人税は二重課税されます。

会社に利益を残すと、法人税と所得税の二重課税になる

下図のように、同じ利益1,000万円を報酬で受け取る場合でも、会社に残して翌年に報酬で受け取るか、その年に報酬で受け取るかで税額は大きく変わります。

会社に残して、2年目に報酬で取る

1年目利益 1,000万円社長会社に残す法人税等262.6万円2年目利益 0円社長役員報酬1,000万円法人税0円所得税・住民税186.0万円
税金合計448.6万円

1年目に報酬で取る(利益が年をまたがない)

1年目利益 1,000万円社長役員報酬1,000万円法人税0円所得税・住民税186.0万円2年目利益 0円社長報酬なし
税金合計186.0万円

会社に残して年を越すと、税の関門を法人税→所得税と2回通ります。
2年目の報酬は会社の損金になるものの、それに充てる利益がなければ、節税効果はありません。一度払った法人税は戻りません。

利益が先に出ると、法人税が大きくなる

5年間で同じ利益・同じ報酬を出す会社を比べてみましょう。
会社は5年で閉じると仮定します。下の2つは、利益の出るタイミングだけ違います。

利益が先に出る場合

棒は利益、青線は報酬900。紺は法人税がかかる部分1,5001年目法人139.31,2002年目法人67.29003年目6004年目3005年目赤字(使えない)
5年間の税金合計976.9万円うち法人税等 206.4万円

利益が後に出る場合

棒は利益、青線は報酬9003001年目6002年目9003年目1,2004年目1,5005年目赤字赤字を後の黒字から引く
5年間の税金合計770.5万円うち法人税等 0円

左図のように、利益が先に出ると税額は高くなります。
利益が先に出た会社は、先に払った法人税を後の赤字で取り戻せません。

法人税節税の結論

これらのことにより、法人税を下げるためには以下の2つが重要です。

法人税結論①会社期間全体で、報酬控除後利益をトントンにする。
法人税結論②利益は先にださない。 後に出す。

原則② 役員報酬は均す

所得税の税率は、下記の通り所得が増えるほど段階的に上がります。

所得税の税率

5%195万円以下10%330万円以下20%695万円以下23%900万円以下33%1,800万円以下40%4,000万円以下45%4,000万円超報酬300万円報酬900万円報酬1,500万円課税所得(報酬から給与所得控除・基礎控除などを引いた額)、税率は最大税率。

所得税は累進課税されます。

役員報酬を毎年変えると、所得税が増える

5年間で役員報酬を同じく合計4,500万円受け取る場合で比べてみましょう。
報酬額の年ごとの分配で以下のように税額が変わります。

利益に合わせて、毎年変える

棒は報酬、紺の札はその年の税平均9003001年目21.11,500最高33%2年目388.46003年目63.71,200最高33%4年目257.39005年目154.1
5年間の税金合計884.7万円

5年の平均に均す

棒は報酬、紺の札はその年の税9001年目154.19002年目154.19003年目154.19004年目154.1900最高20%5年目154.1
5年間の税金合計770.5万円

5年間の報酬合計はどちらも4,500万円ですが、凸凹させた方は税金が114.2万円増えています。
報酬の高い年は高い税率で取られ、低い年は控除と低い税率を使い残すためです。

所得税節税の結論

このことより、所得税を下げるためには以下が重要です。

所得結論将来を予測して、 複数年で報酬を均す。

最適な役員報酬を決める

最適な報酬は、2つの原則の釣り合う点にあります。

所得税の結論は「報酬を均す」、法人税の結論は「利益を先に出さない」です。この2つは、よくぶつかります。

報酬の均し方と、税の合計

税所得税・住民税法人税税の合計最適な報酬凸凹させる(利益どおりに取る)均す(毎年同じ額)会社ごとに違う報酬を均すほど

税金が最も小さくなるのは、その間のどこかです。

利益計画を立てましょう

釣り合う点を決めるのは、これから数年の利益です。利益が伸びるのか、減少するのかで、最適な報酬は変わります。
将来の最適な利益予測が出せれば、税金が最も安くなる報酬を、前もって決められます。

以下のツールで役員報酬のシミュレーションができます。数年分の利益の見込みを入れると、社会保険料や退職金まで含めて、税金全体が最小になる報酬を計算します。

役員報酬シミュレーション →5年の利益の見込みを入れると、税と社会保険料の合計が最も小さくなる報酬が分かります。

役員報酬を決めるときの2つの決まりごと

報酬を変えられるのは、期首から3か月以内

役員報酬を会社の経費(損金)にするには、毎月同じ額で払う必要があります(定期同額給与)。額を変えられるのは、原則として事業年度が始まってから3か月以内だけです。
期の途中で利益を見て報酬を上げると、上げた分は経費になりません。役職が変わったときや、業績が著しく悪化したときの改定などの例外はあります。
このため報酬は、期首の時点で、その年とこれから数年の利益計画をもとに決めます。

社会保険料も、報酬のおよそ3割かかる

役員報酬には、健康保険と厚生年金の保険料がかかります。会社負担と本人負担を合わせると、報酬のおよそ3割です(福岡県の協会けんぽで40歳以上なら約30.6%)。
ただし厚生年金の保険料は、標準報酬月額65万円が上限です(2027年9月から段階的に引き上げ)。それを超えた部分には厚生年金の保険料がかからないので、報酬が高くなるほど社会保険料の割合は下がります。
上のシミュレーションは、この社会保険料も合わせて計算しています。

役員報酬以外の節税策の比べ方

個別の節税策はたくさんありますが、効き目が大きいのは、ここまで見てきた大原則です。個別策は、その上に積み上げるものと考えてください。
個別策は、どの税をどう減らすかで、次の6種類に分かれます。

  • 個人の控除を増やす › 小規模企業共済、ふるさと納税生命保険料控除退職金で受け取る(退職所得控除) › 控除額×自分の税率だけ減る。退職金は退職時にしか使えないが効き目大きい。

    所得税

  • 法人の利益を下げる › 経費の見直し › 減るのは使った額の2〜3割(法人の税率分)で、残りのお金は出ていく。必要な支出でないと損。

    法人税

  • 法人の税額を直接減らす › 賃上げ促進税制などの税額控除 › 税額そのものが減るので効果大。投資・人・研究開発に控除があります。

    法人税

  • 会社の経費で、個人は非課税 › 出張日当、借上げ社宅 › 会社では経費になり、個人では所得にならない。両方の税が減るので最も効果的。

    法人税と所得税の両方

  • 所得を分ける › 家族を役員にする › 家族それぞれの低い税率の段を使えるので効果的。勤務実態が必要。

    所得税

  • 課税の繰り延べ › 倒産防止共済、法人保険、特別償却 › あくまで先送り。出口対策と合わせないと効果なし。

    先送り(法人税)

はシミュレーションで計算に入れています

それぞれの策は、今後、論点ごとの解説ページで取り上げます。

参考サイト

2026-10-11時点の法令・通達・国税庁の公表資料に基づいて書いています。個別の取引への当てはめは、 事実関係によって結論が変わることがあります。